2009年11月6日金曜日

第14回 愛媛教育会館

Ehime Education Hall
[image: "Ehime Education Hall" on flickr, by ida-10]



Ehime Education Hall
[image: "Ehime Education Hall" on flickr, by ida-10]



Ehime Education Hall
[image: "Ehime Education Hall" on flickr, by ida-10]



Ehime Education Hall
[image: "Ehime Education Hall" on flickr, by ida-10]



この建築の特徴を捉えるにあたり、まず、建築の「様式」について見ていきたいと思います。

世界各地の建築には、それぞれの地域の宗教、気候、文化、社会的な要請等、様々な背景から多種多様な「様式」が生み出されています。そうした様式は歴史的にも変化を続け、例えば西洋建築を取り上げても、ゴシック、ルネサンス、バロック…など歴史の流れに伴って様式が変化していることが見て取れます。

そうした様式に世界的に大きな変化が訪れたのが、19世紀末から20世紀にかけての近代化に伴って登場した「モダニズム建築」と呼ばれるものです。日本では明治時代から大正時代に当たりますが、この時代には日本にも鉄筋コンクリートの技術が伝来し、現代の建物にも通じる近代的な建築が建設されるようになりました。つまり、白くて装飾の無い「箱」のような「モダニズム建築」が日本でも見られるようになりました。

しかし昭和に入り、日本ではこのモダニズム建築に対抗した様式が見られるようになりました。1930年代の一時期にみられる「帝冠様式(ていかんようしき、帝冠式とも)」です。帝冠様式は、明治以降に建てられるようになった、鉄筋コンクリート造の「モダニズム建築」の上に、日本的な「瓦屋根」を乗せた様式で、代表的なものに、東京・上野の東京国立博物館などが挙げられます。

昭和に入ってから帝冠様式が見られるようになった理由には諸説ありますが、「鉄筋コンクリート+瓦屋根」という外観からちょっと変わった印象を受けるのは確かです。

前置きが長くなりましたが、「愛媛教育会館」もそうした帝冠様式の特性を受け継ぐ貴重な建築といえます。現代的な「箱」の上に屋根が乗せられた外観。建てられたのも1937年ですから、帝冠様式が建てられた時代にちょうど合致します。

しかし、この愛媛教育会館は他の帝冠様式の建築とは少し異なっているようです。

というのも、この建築は「木造」による建築だからです。帝冠様式は「鉄筋コンクリート造」である、というお約束がありました。この建築もパッと見たところ鉄筋コンクリート造の建築に見えますが、実際は木造であるようです。さらに細かく見ると、屋根も「瓦」屋根ではなく金属板によるものです。

このように見ると、「帝冠様式」と見せかけて実は木造3階建ての建築、という愛媛教育会館はなかなか珍しい建築であるといえそうです。階段まわり、ホール、装飾的な照明など内部にも見所がいっぱいです。



設計:浅香了輔(愛媛県技師)
所在地:松山市北持田町131-1(地図
主要用途:行政施設
階数:地上3階
竣工:1937年
登録有形文化財