2012年3月25日日曜日

第16回 今治市庁舎

Imabari City Hall Complex

[image: "Imabari City Hall Complex" on flickr, by ida-10]



Imabari City Hall
[image: "Imabari City Hall" on flickr, by ida-10]




愛媛県今治市には、建築界の巨匠、丹下健三が設計した数多くの建築が現存しています。

大阪府で生まれた丹下健三が、父の出身地である今治に移り住んだのが7歳の時。それから少年-青年期を今治で過ごした丹下にとって今治は故郷ともいえる土地であり、その縁で多数の建築が丹下によって手掛けられることになります。「今治市庁舎」もそうした建築のひとつです。


中学に入ってから、父が別宮という静かな住宅地に新しい家を建てた。[中略]新しい家の筋向かいは、代々庄屋さんの田坂家であった。ご三男が中学の先輩で、しょっちゅう声を掛けて下さったが、この方がのちに今治市長になられた田坂敬三郎さんである。
市長の時代に、「今治にも、何か建ててほしい」と再三誘われ、昭和三十二年に、市庁舎の設計をさせて頂いている。

丹下健三「一本の鉛筆から」(日本経済新聞社、1985年)p.18


この建築デザインの特徴のひとつとして、ファサード(建物の正面)に角度を付けて設けられた、立体格子(ブリーズ・ソレイユ)が挙げられます。このブリーズ・ソレイユは、表情に陰翳を与えながら、市庁舎の執務空間への日除けとして機能しています。

壁面をジグザグさせることで強度を増す折板構造が用いられているのも大きな特徴です。この構造の採用により、現代のオフィス空間では当たり前のように取り入れられるようになった無柱の空間を実現しています。ファサードのデザインと、地震国日本の構造上の条件とを両立させているといえるでしょう。

また、この場所には今治市庁舎のみならず、時を同じくして建てられた今治市公会堂(1958年)と今治市民会館(1965年)がコの字型に並んで配置され、これらの建物に囲まれた外部空間を市民広場として開放するという計画がなされています。これらの建物による計画は、この時代に「都市のコア(核)」として広まった都市デザインの手法が取り入れられたもので、建築単体だけではなく、建築と都市のあり方を考えた丹下の思考が見てとれるようです。



設計:丹下健三(東京大学 丹下健三計画研究室・坪井善勝研究室)
所在地:愛媛県今治市別宮1-4-1(地図
主要用途:市庁舎
構造:鉄筋コンクリート造
階数:地上3階
竣工:1958年
延床面積:4,186㎡

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